『「しわ」を見て欲しかった』

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  拝啓 三浦春馬

 一度もお会いしたことがないのに、また突然にお手紙差し上げるご無礼をお許しください。

 30歳で亡くなったあなたは私のお兄ちゃん世代の方で、テレビを見ると良くお姿を見ていました。

 この度の弔事に伴って、このお手紙を書くことができます。生前には思いもしなかったことです。先に感謝申し上げます。

 私はあなたが許せません。どうして先に楽になってしまったのか。どうしてそんなに簡単に人生を諦めたのか。「これから先もっともっと苦しいことがあり得る」ということからどうして逃げてしまったのか。最近流行りの芸能界からの「卒業」もできたと思います。確かに有名なあなたが芸能界から卒業しても注目は浴びるでしょう。そして様々な人から忘れられるでしょう。つまり「これからの人生で予想される全ての困難が受け止め切れない」、もしくは「それらの困難とこれから予測される幸福が釣り合わない」から自殺されたのではないでしょうか。私はそれは「逃げ」だと思います。だから今はあなたを許すことが出来ません。

 このビデオを見てください。この「しわ」はこれから苦しいことがずっと続くと分かっていても、なるべく明るく、なるべく頑張って、そして強かに人生の最後の時間を過ごす人々が描かれています。私もこの人たちのように無名で、死んでもすぐに忘れ去られる一個人に過ぎません。それでも、気持ちの上では岩にしがみついて何とか毎日を生きています。

 あなたの自殺は残念です。毎日死ぬことを考えていたあの頃に戻されるような気がするからです。完全な八つ当たりです。本当にすみません。

 そちらは時間がたっぷりあるでしょう。あなたからこの「しわ」の感想を聴ける日を楽しみにしています。

敬具 とあるうつ病患者より 三浦春馬様、そして全ての真剣に死を考えた方々へ。