「君の名は」について-感想-

 盛大にネタバレを含みますが、この二日間考えた、「なんで僕はあの映画を見たとき感動できなかったんだろう」というということについて書きます。

 

ネタバレ含みますので、行を開けます。

 

 


「君の名は。」予告2

 

なぜ景色を覚えているの?

 主人公の瀧くんは、三葉ちゃんと入れ替わっているときに見た景色をイラストとして画き溜めます。三葉ちゃんと入れ替わっている間の体験を忘れたくないということからの行動だと思います。

 

 ただ、最も初期の設定で「入れ替わっている間の記憶は薄れていく」という設定があったと思います。もちろん、それを防ぐために二人は「交換ノート」をつけるのですが、「交換ノート」に村の景色についてあんなに詳細に記録されているとは思えないですし、名前を忘れてしまうぼど曖昧な記憶で、あんなにも完成度の高い絵が描けてしまう理由が分かりませんでした。

 あの瀧くんの絵は、時を隔てた彼らを「出会わせる」ものなので、そこがどこが腑に落ちず、引っかかってしまいました。

 

「結び」がつなぐもの

 この物語のキーワードの一つは「結び」かなと思いました。「つながり」とも言い換えることができると思います。これら二つの言葉はかなりにていますが、少し違うと考えています。これは僕の考えですが、「結び」とは自然的なもの、非人間的なものへの「畏れ」がよく強く表れた言葉だと思います。つながりは「断つ」ことができます。イメージとしては「糸、ひも」のようなイメージだと思います。でも、「結び」はほどくことはできますが、ほどいても「糸、ひも」のようなつながりとして残ります。「結び」は簡単には断ち切れないのです。簡単に断てる関係は例えば、モノを捨てたり、恋人と別れたりすることかもしれません。一方、簡単に断てない「結び」は家族、親戚、あるいは自然の恩恵と脅威、もしくは神仏とのつながりがあるでしょう。一旦まとめると、

「つながり」…「糸、ひも」のような関係。比較的俗世的。

「結び」…「断とうとしてもなかなか断てない」関係。超自然的なものに多い。

 

僕はあまり二項対立的な整理は好きではないので、断っておくと、私たち1人1人が人・あるいはものと持っている関係はこのような単純に分解できるものではありません。1人1人にとってどんな関係が「つながり」であり「結び」なのかというのは異なりますし、その時々の状況によっても違います。厳格に「つながり」、「結び」を定義するのは無駄ですし、ある意味危険だとも感じます。

 

 ところで「結び」の発生と喪失についてもう少し考えたいと思います。「つながり」との大きな違いは、それが生まれる時と失うときが自分ではコントロールできない場合が多いことです。私たちが変えたくても変えることのできない「どこで生まれ」「いつ生まれ」「誰と出会い」「いつ死ぬか」ということは自分ではコントロールできません。まるで「神」がいるかのような、私たち1人1人と世界との「結び」です。喪失する時も、自分ではそうした「結び」は制御しようがありません。

 瀧君の「生」と三葉ちゃんの「死」も「結び」です。通常死んだ人間は復活しません。人間はそうした「結び」が存在することを受け入れ、しかし抗ってきました。物語で出てきた「ご神体」は「あの世」と「この世」の境は、人々がそれらを受け入れながらも、それらが出会えるという「物語」を作り出すことで少しでも希望をもって生きられるように聖地が作られるのだと思います。

 

 なにが言いたいかというと、「三葉ちゃんは死んだままでなければならなかった」ということです。事故、三ちゃんの死など葉理不尽な「結び」がすべて無かったことになってしまうことは、「僕達はなんでもできる」という間違ったメッセージを発信してしまうことになるかもしれないと感じます。新海誠監督がそれを意図されたかは分かりませんが、本作の重要なテーマであると感じた、つながりや結びが全く同じものであるかのように扱われているのは、少し残念でした。

 

好きだったところ

かわいい(三葉ちゃん大正義www)

言の葉の庭」の先生らしき教師登場!!「正直一番ビックリ(笑)」

映像がとにかくきれい。

田舎に住んでいる僕から見ても納得できる田舎(暗黒面)の描写(選挙、「守るため」の伝統、閉鎖的なコミュニティー(地域・学校等)」

 

終わりに

 新海監督の作品を拝見するのは三作目です。(「秒速」、「言の葉の庭」、本作)

SFも書かれる監督ですが、

前二作のあまりファンタジーっぽくないストーリー展開や雰囲気を期待していたこと

事前のインターネット上でのかなりの高評価

映像表現に対する慣れ

 

 から、細部のもしかすると主要なメッセージではない部分にまで注目して見てしまった可能性はあると思います。友達からは「違う映画みたでしょ(笑)」とも言われましたが、自分でもなんだかそんな気分です。そのため、自分の意見へのコメント、反論はどんどんしていただきたいです。

 よろしくお願いします。

 

最後に、新海監督はこれからの日本アニメ界の巨人となる方です。

次回作も楽しみにしたいと思います。